毎日のように緊張感と向き合う警備員という仕事。福岡市で暮らし、昼夜問わず現場を守る仕事は、体だけでなく心も知らず知らずのうちに疲弊していきます。そんな私が、ふと思い立って一人旅に出かけることにしました。目的地は、鹿児島県南さつま市。都会の喧騒から離れたこの地には、優しく穏やかな空気と、心をゆるやかにほぐしてくれる風景がありました。
朝焼けと潮風に包まれる加世田の町並み
旅の始まりは、早朝の加世田。福岡から鹿児島中央駅まで新幹線で向かい、そこから指宿枕崎線を経て南さつま市へ。バスに揺られながら窓の外を見ると、少しずつ広がる田園と海のコントラストに、自然と心がゆるんでいくのを感じました。
加世田の町並みはどこか懐かしく、昭和の空気を色濃く残しています。小さな商店街の店先には手書きのポップ、ゆっくりと歩く地元の人々の笑顔。そんな素朴な風景に、福岡では感じられない時間の流れがありました。
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吹上浜で過ごす静かなひととき
南さつま市を訪れるなら、やはり吹上浜は外せません。日本三大砂丘にも数えられるこの浜辺は、ただ立っているだけで心が洗われるような静けさに満ちています。遠くに広がる水平線と、絶え間なく寄せては返す波のリズム。それを眺めているうちに、頭の中のざわめきが少しずつ消えていくのを感じました。
靴を脱いで、素足で砂の上を歩くと、ほどよい温かさが足裏に伝わってきて、その感触すらも癒しになりました。朝の光の中で見た砂丘の曲線、波に照らされてキラキラと光る砂粒。これだけで旅に出てよかったと、心から思えたのです。
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南さつまの歴史と文化に触れる加世田郷土資料館
心がほぐれたところで、少しだけ歴史にも触れたくなり、加世田郷土資料館を訪れました。静かな館内には、南さつまの歴史や民俗文化が丁寧に展示されており、かつてこの地で暮らしてきた人々の息遣いが感じられました。
なかでも印象的だったのは、薩摩焼や古い農具、そして加世田出身の偉人たちにまつわる資料です。豪華さはないけれど、地に足のついた展示の一つ一つが、心にじんわりと染み入りました。
心と体を癒す温泉宿でのひととき
今回宿泊したのは、南さつま市の山間部にある温泉宿「いやしの湯 加世田亭」(仮称)。木のぬくもりを感じる和風の宿で、チェックインした瞬間から優しい笑顔とお茶の香りが迎えてくれました。
部屋は畳敷きで、窓からは広がる緑の景色。何もないことが、こんなにも贅沢に感じるのは久しぶりでした。大浴場では、地元の天然温泉がふんだんに使われており、少しぬるめの湯に長く浸かっていると、全身の緊張がすーっと抜けていきました。湯けむり越しに見る山々のシルエットが、まるで心の風景のように映りました。
地元食材をふんだんに使った料理に舌鼓
夕食は、宿の食事処でいただく会席料理。南さつま産の黒豚を使ったしゃぶしゃぶ、地元の海で獲れたアジやタイの刺身、そして季節の野菜を使った煮物や和え物。どれも素材の味を活かしつつ、手間暇かけて丁寧に作られているのがわかりました。
特に心に残ったのは、甘辛く炊いた郷土料理「つけあげ(さつま揚げ)」のふっくらとした食感と、出汁の深い味わいです。温かいごはんと一緒に食べると、自然と笑みがこぼれるような、そんな優しい味でした。
地元の焼酎でほっとひと息
食後には、南さつまで造られている地元焼酎を一杯。芋の香りがふわっと広がる「薩摩乃風」(仮称)は、まろやかでありながら力強さも感じられる一本でした。ロックでゆっくりと味わいながら、旅の景色を思い返す時間は何よりも贅沢なひととき。警備の仕事ではなかなか味わえない「何もしない時間」が、心に深く沁みました。
帰り道もまた癒しの時間に
旅の終わりには、宿の女将さんが笑顔で手を振ってくれました。加世田のバスターミナルから鹿児島中央駅まで戻る途中、車窓から見える田園風景や人々の暮らしに、またひとつ、心が和らぎました。
新幹線で福岡へ戻る道のりも、どこかほっとする気持ちでいっぱいでした。旅を終えたあとでも、その温もりが体に残り続けているのが不思議です。
南さつま市のお土産で旅の余韻を持ち帰る
帰り道に立ち寄った道の駅「南さつま いなか市場」(仮称)では、地元で採れた柑橘のジャムや黒糖を購入しました。家に帰ってからトーストに塗って食べるその味に、旅の情景がふとよみがえります。
また、焼酎の小瓶もお土産に。日々の仕事を終えた夜に一杯飲むと、あの加世田の夜の静けさが、心の奥にふわりと広がります。
癒しを求めるすべての人に 南さつま市は心のふるさと
今回の旅で感じたことは、「癒し」とは決して特別なことではなく、自然の中で、自分の時間を取り戻すことなのだということです。鹿児島県南さつま市には、そのすべてが詰まっていました。
福岡市からの移動は少し時間がかかりますが、それ以上に得られる心の余白は、何ものにも代えがたい価値があります。これからも、こうした旅を人生の中で大切にしていきたいと思います。