福岡の警備員の一人旅No.512 忘れかけていた感覚を取り戻す旅 世界遺産・オーストラリアのゴンドワナ雨林で中年警備員が見つけた再生の時間

世界遺産

福岡市で警備員として働く私は、日々の責任と緊張の連続のなかで、いつの間にか“自然と向き合う時間”を失っていました。
夜勤明けの空を見上げながら、「もっと広い世界を見てみたい」「誰にも干渉されずに、心から癒されたい」と、ふと思うことが増えていたのです。

そんなある日、書店で偶然手に取った写真集の1ページが目に留まりました。
そこに映っていたのは、濃密な緑に包まれた巨大な森。
その名前を、私はその時初めて知りました──世界遺産・オーストラリアのゴンドワナ雨林。

調べれば調べるほど、心が引き寄せられていきました。そして気づけば、私は旅立つ決心をしていたのです。



オーストラリアのゴンドワナ雨林とはどんな場所か

ゴンドワナ雨林は、オーストラリア東部、クイーンズランド州とニューサウスウェールズ州にまたがる広大な熱帯〜温帯の森林地帯です。
世界自然遺産に登録されたのは1986年。その登録面積はなんと36の国立公園と8つの保護区を含む約37万ヘクタールにも及びます。

この雨林の最大の特徴は、地球の大陸が一つだった太古の時代「ゴンドワナ大陸」に由来する、極めて古い生態系を今も保持していることです。
何千万年という歳月をかけて進化した動植物が、現在もそのままの姿で生き続けている──それはまさに“生きた化石”の森とも言える存在です。

この森に足を踏み入れると、私たち人間がどれほどちっぽけで、自然がいかに雄大かということを、静かに思い知らされるのです。



気候と四季のリズムが作る森の表情

ゴンドワナ雨林の多くは標高の高い山岳部に位置しており、年間を通じて湿潤な気候に恵まれています。
亜熱帯から温帯までの多様な気候帯にまたがっているため、場所によってその表情は大きく異なります。

夏(12月〜2月)は比較的湿度が高く、深い緑が生い茂る生命力にあふれた森が広がります。
一方、冬(6月〜8月)は朝晩の冷え込みが厳しくなり、霧のかかった幻想的な風景が広がります。

私が訪れたのは5月初旬。森には穏やかな風が流れ、木漏れ日が幻想的な空気を演出していました。雨上がりの道を一歩ずつ進むたび、足元から自然の鼓動が伝わってくるようでした。



太古の生命が息づく森の奇跡

この雨林には、数え切れないほどの希少な動植物が生息しています。
特に印象的だったのは「ナンキョクブナ」と呼ばれる古代樹木。
その姿はまるで何千万年も時をさかのぼったかのような、神聖さすら感じさせるものでした。

また、「カソワリ」という巨大な飛べない鳥にも出会いました。
その堂々たる佇まいと鮮やかな色彩は、まさに“恐竜の末裔”と呼ばれるにふさわしい迫力です。

苔むした倒木の上には、小さな蘭が静かに咲き、木の上ではカエルやトカゲがじっと息をひそめています。
どこを見ても命があふれていて、「自然とは、こんなにも繊細で壮大なものだったのか」と圧倒されました。



文化的・宗教的な背景に触れる時間

ゴンドワナ雨林は、オーストラリアの先住民アボリジニの人々にとっても、極めて重要な意味を持つ聖地です。
この地は彼らの神話の舞台であり、儀式が行われた場所であり、祖先の霊が眠る場所でもあります。

現地で参加したガイドツアーでは、先住民の長老が「ドリームタイム(創世神話)」について語ってくれました。
“木々にも山々にも魂が宿っている”という彼らの世界観に触れたとき、私たち現代人が忘れかけていた「自然との調和」という価値観が胸に響いてきました。



中年の心にしみわたる“静寂と再生”の時間

森の中を歩いていると、不思議と時計を見なくなります。
聞こえてくるのは、鳥の声、風の音、そして自分の足音だけ。
スマートフォンも圏外、通知も雑音もありません。

私はただ歩き、ただ立ち止まり、木々を見上げ、深呼吸をしました。
その繰り返しが、心の奥に積もっていた疲れや迷いを、少しずつほどいてくれるようでした。

若い頃には見過ごしていた“何もない時間”の贅沢さ。
50代を迎えた今だからこそ、その価値をじんわりと実感できたのです。



年間訪問者数と観光のスタイル

ゴンドワナ雨林を訪れる年間観光客数はおよそ100万人程度とされています。
ただしその大半は特定の観光エリアに集中しており、森の奥深くまでは足を運ばない人も多いです。

私のように「静けさと再生」を求めて訪れる旅人にとっては、混雑のない早朝や夕暮れの時間帯が特におすすめです。
ガイド付きエコツアーを利用すれば、安全かつ深い学びを得ながら森を歩くことができます。



旅の実際のルートとアクセス方法

私が辿った旅のルートは以下の通りです。

福岡空港 → 成田空港(国内線 約2時間)
成田空港 → ブリスベン空港(国際線 約9時間)
ブリスベン空港 → レンタカーでラミントン国立公園へ(約2時間半)

滞在中は「オライリーズ・レインフォレスト・リトリート」という宿に泊まり、そこを拠点に雨林トレイルを複数歩きました。
「ツリートップ・ウォーク」や「モリナル・フォールズ・トレイル」など、初級から上級までルートは充実しており、初心者でも無理なく楽しめます。



まとめ 世界遺産・オーストラリアのゴンドワナ雨林がくれた静けさと目覚め

この旅は、ただの観光ではありませんでした。
それは、「心を休めるための旅」であり、「自然と自分をつなぎ直す旅」でした。

中年警備員として、日々人々の安全を守りながらも、自分の内面は後回しにしていた。
でも、このゴンドワナの森で、私はようやく自分自身と向き合う時間を持てたのです。



もし、今の生活にどこか物足りなさや疲れを感じているなら。
もし、静かな場所で心をリセットしたいと思っているなら。
世界遺産・オーストラリアのゴンドワナ雨林は、間違いなくあなたの背中をそっと押してくれる場所です。

時間が止まったような太古の森で、あなたも一度、自分自身と深く対話してみませんか。