福岡の警備員の一人旅No.510 中年警備員が歩いた太古の森と心の静寂 世界遺産・タスマニア原生地域で出会った命の原風景と再生の旅路

世界遺産

喧騒を離れて 自然と向き合う中年警備員の旅が始まる

福岡市で警備員として働く私は、日々の忙しさと責任に押しつぶされそうになる瞬間が増えていました。
そんなある日、テレビで見た「世界遺産・タスマニア原生地域」の映像が、心の奥を強く揺さぶったのです。
“ただ静かに歩きたい”“自然の中に身を置きたい”──そう思い立ち、人生で初めて、オーストラリアの南端にあるタスマニア島へ、ひとり旅に出ました。

この記事では、中年の一人旅だからこそ見つけられた、タスマニア原生地域の魅力をたっぷりとお届けします。



世界遺産・タスマニア原生地域とはどんな場所か

タスマニア原生地域は、オーストラリア・タスマニア州の南西部に位置する、広大な原始の森と山岳地帯です。
面積は1万5千平方キロメートル以上、島全体の約20%を占めるほどの広さを誇ります。
1982年に世界自然遺産に登録され、さらに文化的価値も認められた複合遺産でもあります。

ここには恐竜よりも古いとされる植物や、氷河時代から変わらない生態系がそのまま残されており、「生きた地球の化石」とも言える場所です。人の手がほとんど加わっていないこの原生地域は、訪れる者に自然の偉大さと静けさを教えてくれます。



タスマニアの場所と気候 季節ごとの表情

タスマニア島は、オーストラリア本土の南約240kmに浮かぶ島で、緯度は南極に近く、比較的涼しい海洋性気候に属しています。

夏(12月〜2月)は最高気温が20℃前後と過ごしやすく、森歩きやキャンプに最適なシーズンです。
一方、冬(6月〜8月)は山岳部で雪が降り、氷点下近くまで気温が下がることもあります。

私は3月中旬に訪れましたが、空気は澄み、風は冷たく、心地よい静けさが辺りを包んでいました。



太古の生命が息づく森と山々の物語

タスマニア原生地域には、驚くほど多様で希少な動植物が生息しています。
特に有名なのは「フエゴスギ」や「ヒュオンパイン」といった1,000年以上生きる古木たち。
その根元に立ち、幹にそっと手を当てたとき、「人間の寿命なんてちっぽけなものだな」と自然に思えました。

また、タスマニアデビルやワラビー、エキドナなど、本土ではなかなか見られない動物たちとの出会いも、この旅の忘れられない思い出です。



先住民の精神文化が残る聖地としての価値

この地は、2万年以上前から先住民パラワ族が暮らしていた場所でもあります。
岩絵や遺物、儀式に使われた洞窟などが今も発見され続けており、文化的・宗教的価値も高く評価されています。

私が訪れた「マウントフィールド国立公園」では、ガイドが先住民の神話や精霊信仰について語ってくれました。
自然と一体になって暮らしていた彼らの視点に触れることで、私たち現代人が失いかけている「自然との調和」の感覚を、少しだけ取り戻せた気がしました。



中年世代にこそ刺さる“癒しと再生”の空間

タスマニアの原生林を歩いていると、不思議と時間の感覚が失われていきます。
静けさの中に響くのは、鳥のさえずりと自分の足音だけ。スマートフォンも圏外。誰とも話さず、ただ歩く。
その孤独が、逆に心を温かく満たしてくれました。

50歳を過ぎた今だからこそ感じられる「生きている」実感。
忙しい毎日から抜け出して、自分を見つめ直すには、まさに最適の場所です。



年間訪問者数とその特別な静けさ

タスマニア全体の観光客数は年間約150万人といわれ、そのうち原生地域を訪れる人はさらに少数です。
観光地としての派手さはありませんが、そのぶん「静寂と深さ」が保証されている場所です。

登山道やトレッキングコースも整備されていますが、道中で他の人とすれ違うことはほとんどなく、まるで世界に自分しかいないかのような錯覚すら覚えます。


実際の旅行ルートとアクセス方法

私が歩いたのは、以下のルートです。

福岡空港 → 成田空港 → メルボルン空港(約10時間)

メルボルン空港 → ホバート空港(タスマニア州都/約1.5時間)

ホバート市内で1泊後、レンタカーで西部の「クレイドル・マウンテン」方面へ(約3時間)

「オーバーランド・トラック」を2日間に分けて散策し、途中キャンプ泊

帰路に「マウントフィールド国立公園」や「フランクリン・ゴードン・ワイルドリバーズ国立公園」にも立ち寄る

地元ガイドが同行するエコツアーも多く、安全に自然体験ができます。



まとめ 世界遺産・タスマニア原生地域がくれた静寂の贈り物

中年警備員の私にとって、この旅は単なる観光ではありませんでした。
それは、“自分の内面と向き合う旅”“自然から生き方を学ぶ旅”でした。

スマホの通知もない。雑音もない。あるのは、風の音と水の音。
その中に身を置くことで、心の奥に沈んでいた疲れや迷いが、静かに溶けていきました。

もし、日常の喧騒に疲れたと感じたなら。
もし、自分をもう一度リセットしたいと思ったなら。
世界遺産・タスマニア原生地域という場所が、そっと背中を押してくれるはずです。


自然と心が調和する感覚を、あなたも体験してみてはいかがでしょうか。
この島は、きっとあなたに何かを語りかけてくれます。