毎日を真面目に、懸命に生きていると、ふとした瞬間に「どこか遠くへ行きたい」と思うことがあります。そんなとき、私は福岡から空の便を乗り継ぎ、山形県の日本海沿いにある酒田市へ向かいました。今回は、警備員という日々の責任と緊張から少し離れて、自分だけの時間を取り戻す旅。穏やかな景色、美味しい料理、静かに流れる時間が、疲れた心にそっと寄り添ってくれるような体験となりました。
静けさに包まれる庄内空港から始まるやさしい旅
福岡空港から飛行機で羽田へ、そして庄内空港へと乗り継ぐルートは少し時間こそかかりますが、空の旅そのものが非日常。庄内空港に降り立った瞬間、目の前に広がるのは穏やかな田園と海の気配でした。ターミナルから出ると、涼やかな日本海の風がほおをなで、心がほっとほぐれていくのを感じます。
空港から酒田市街まではバスで30分ほど。移動中の車窓には、のびやかに広がる水田、低く連なる山々、遠くに光る海。派手さはないけれど、まるで故郷のような安心感を与えてくれる風景が続きます。
山居倉庫で出会う、時が止まったような癒しの空間
まず向かったのは、酒田のシンボルとも言える「山居倉庫」。明治時代に建てられた米の貯蔵庫で、ケヤキ並木と白壁が印象的な場所です。静かに歩いているだけで、当時の空気が流れてくるような不思議な感覚になります。
倉庫内は観光案内所や物産館になっていて、庄内米や地元の地酒などがずらりと並んでいます。木の香りが漂う空間で、ゆっくりと商品を眺める時間は、都会では味わえない癒しそのもの。特に、地元の職人さんが作った手ぬぐいや陶器の小物は、ひとつひとつに温もりがこもっていて、お土産としても自分へのご褒美としてもぴったりです。
日本海に沈む夕陽と日和山公園のしずけさ
夕方が近づく頃、日和山公園へと足を運びました。小高い丘の上にあるこの公園は、港町・酒田の風景を一望できる絶景スポットです。灯台や方角石など、かつての船乗りたちの羅針盤とも言える歴史的な建物が点在しており、歴史と風景のコントラストがまた美しいのです。
この公園の魅力は何と言っても、日本海に沈んでいく夕陽。その赤く染まった空と海の境界が溶け合う時間は、言葉を失うほどの静寂と美しさで、心の奥がじんわりとあたたまるようでした。ベンチに座ってただその光景を眺めているだけで、日々のストレスが溶けていくのがわかります。
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庄内の恵みを味わう癒しの夕食時間
夕食は、地元の小さな割烹で。お店の人に「旅の人ですか」と声をかけられ、地元のお酒をおすすめしてもらいました。ここで味わったのは、庄内産の岩牡蠣、はえぬき米、だだちゃ豆、そして日本海で獲れたばかりの魚介。どれも素材の味が生きていて、体の中から力がわいてくるような、そんな食事でした。
特に印象に残ったのは「寒鱈のどんがら汁」。具だくさんでやさしい味わいのこの郷土料理は、まさに心に沁みる一杯。お腹も心も、ほっと満たされる時間でした。
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雨上がりの朝、港町にそっと漂う静けさ
翌朝は、やわらかい曇り空。前夜に少し降った雨の香りが街を包み、港町ならではの静けさが心地よく感じられます。朝の散歩は、旧本間家や酒田市美術館方面へ。人の気配が少ない時間帯に、歴史的な建物と出会うことで、自分自身の時間をゆったり味わうことができました。
特に美術館では、庄内地方にゆかりのある作品が静かに展示されており、まるで美しい記憶をめくるような、優しいひとときを過ごすことができました。
心に残るお土産と、帰路に向かう穏やかな気持ち
旅の締めくくりに訪れたのは、酒田駅前の土産物店。定番のだだちゃ豆スイーツや、日本酒のミニボトル、酒田米菓の揚げせんべいなど、どれもこれも心惹かれる品ばかりでした。私は、旅の余韻を持ち帰るように、優しい味の焼き菓子と、手作りの土鈴を選びました。
帰りの庄内空港へのバスに揺られながら、「またここへ戻ってきたい」と静かに思いました。決して派手ではない、でも確実に心を癒してくれるこの土地の優しさが、胸の奥にずっと残っていたからです。
旅は、日常を忘れるためではなく、自分を取り戻すためのものだと実感した酒田の時間。福岡市での忙しい毎日に戻る前に、心をゆるやかに整えてくれる場所として、山形県酒田市は間違いなく特別な存在となりました。