福岡の警備員の一人旅No.470 福岡市に住む警備員が癒しと再発見を求めて歩いた島根県 川本町・美郷町の知られざる魅力と出会いの旅

旅行

都会の喧騒から離れて、ゆっくりと自分を見つめ直したい。そんな思いから、私は福岡市での警備の仕事を一旦忘れて、島根県の山間にある川本町と美郷町へと一人旅に出かけました。ここには、観光地化されていない本当の「日本の里山」が息づいていました。

人口と気候がつくる町のリズム

川本町は人口およそ3,000人、美郷町は約4,000人と、とても小さな町です。高齢化が進んではいるものの、地域の人々のつながりが濃く、訪れた私にも気さくに声をかけてくれる温かさがありました。
気候は穏やかで、冬にはしっかり雪が降り、春夏秋冬がはっきりしているのが特徴です。私が訪れたのは初秋。朝夕はひんやりと涼しく、昼間は心地よい風が吹いていて、歩くには最高の気候でした。



山に抱かれた静かな地形と立地

川本町と美郷町は、いずれも島根県の中央に位置し、江の川流域の自然豊かな山間地域です。美しい清流と緑の山々に囲まれたこの地は、車がないとアクセスが少し不便ですが、そのぶん静かで、旅人にとってはまるで時間が止まったかのような空間が広がっています。
車でのドライブ中、道沿いに現れる棚田や石積みの畑、小さな無人駅などが、どこか懐かしくて、童心に返るような感覚に包まれました。



川本町・美郷町の出身者と意外な人物

この静かな山あいの地にも、多彩な才能が育っています。川本町出身の人物には、民俗学者や山陰地方の地域文化に携わる学者など、地域文化を大切に守り継いできた方々がいます。
また美郷町は、詩人や工芸作家の出身地としても知られており、創造の源はこの静寂の自然なのだと実感しました。



歴史と産業に息づく山の暮らし

かつてこの地域は鉱山の町として栄え、美郷町には今も「湯抱温泉」や「千原温泉」など、古くから湯治場として親しまれてきた温泉が残ります。
一方、川本町は「有機農業」の先進地として知られており、化学肥料に頼らない農法で育てられた野菜やお米が、町の誇りとなっています。
さらに両町ともに「石見和紙」や「木工芸」など、手仕事を大切にする伝統産業も息づいており、地元の道の駅ではそうした製品に触れることができます。



文化と伝統が今も生きる町

川本町では「石見神楽」が盛んで、町のあちこちに神楽殿が点在しています。ちょうど私が訪れた時期に小さな神社での神楽奉納があり、地元の子どもたちと大人たちが一体となって舞う姿を見て、心が温かくなりました。
また美郷町では「古代ロマン」の息吹が漂い、縄文時代からの遺跡や伝承が地域に根づいています。「船通山」周辺には神話と結びついた伝承が多く、散策中に地元の方から昔話を聞かせてもらえたのも、印象深い体験でした。



訪れて感動した観光スポット

川本町では「温泉津(ゆのつ)温泉」まで足をのばし、歴史的な木造建築の温泉宿で一休みしました。地元の方から「ここのお湯は体の芯まで温まるで」と勧められた通り、しばらく体がぽかぽかしていました。
美郷町では「千原温泉」が強烈に印象に残っています。全国的にも珍しい“泡の出る天然炭酸泉”で、ぬるめの湯にゆっくり浸かると、全身がじわじわと緩んでいく感覚がありました。まさに「癒しそのもの」です。
その他にも「道の駅インフォメーションセンターごいせ仁摩」や「三瓶山のふもと」など、自然と人との共存を感じられる場所が点在しています。



四季折々の祭りと地域のにぎわい

川本町では「川本夏まつり」が有名で、花火大会や屋台、神楽の披露が行われ、町全体が活気に包まれます。
一方、美郷町では「江の川まつり」や「ホタル観賞会」など、自然と調和した祭りが特徴です。夜に江の川のほとりでホタルが舞う幻想的な光景を目にしたとき、日常のすべてを忘れてただ見とれていました。



土地の恵みが詰まった郷土料理と地酒

川本町の特産品として知られる「有機野菜」と「えごま製品」は、地元の道の駅や直売所で手に入ります。えごまの香ばしいドレッシングをかけたサラダは絶品でした。
美郷町では、江の川で獲れた「鮎の塩焼き」や「いのしし鍋」が名物。私は「猪ラーメン」という地元限定メニューにも挑戦しましたが、意外にもあっさりしていて、とても美味でした。
地酒も魅力で、どちらの町でも地元の酒造が作る「純米酒」があります。少し冷やして、地元料理と一緒にいただくのが最高のひとときでした。



忘れられないお土産たち

お土産には、美郷町産のはちみつや、えごま油、石見和紙のしおりなどを選びました。どれも地元の風土を感じさせてくれるもので、職場の同僚たちにも喜ばれました。
特に「炭酸泉の入浴剤」は、自宅でもあの温泉気分を味わえると人気の一品です。



私の旅のルートと感想

福岡市からは新幹線で広島まで行き、そこから三次を経由して浜田方面へ。レンタカーを利用して川本町と美郷町をまわりました。
車窓に広がる景色、地元の人とのふれあい、そして自然の中で過ごす時間の心地よさ…そのすべてが、警備という仕事で張りつめた心を優しくほどいてくれました。
大規模観光地では味わえない“素朴な贅沢”が、ここには確かにあります。



おわりに

島根県の川本町と美郷町は、華やかではないけれど、旅人を本当に癒してくれる場所です。自然、文化、人…どれもがじんわりと心に染み入ってくる、そんな町でした。
日々の生活に疲れたとき、自分と向き合いたくなったとき、ふとした拍子にまたこの町を思い出すでしょう。そしてまた、必ず戻ってきたいと思います。そんな“第二のふるさと”が、私にはできた気がします。