福岡市で警備員として働く私は、普段は規則正しく、時に緊張感のある日々を送っています。そんな私が心のリフレッシュを求めて向かった先が、島根県の中部に位置する雲南市でした。雲や山に包まれた名前の通り、雲南市は静けさと美しさ、そして人の温もりに満ちた町でした。この旅で体験したことを、福岡の暮らしとは異なる“ゆるやかな時間”として、ひとつずつ丁寧に綴っていきます。
人口と気候がつくる落ち着いた空気
雲南市は、島根県のほぼ中央に位置し、人口は約3万4千人ほどの静かな市です。自然に囲まれた環境と、住民の穏やかな人柄が印象的で、日々の慌ただしさを忘れさせてくれます。気候は日本海側気候で、四季折々の変化がはっきりしています。
春は桜が咲き誇り、夏は山々の緑が深くなり、秋は紅葉、冬はしっとりとした雪景色が広がります。私が訪れたのは初夏でしたが、風が涼しく、木陰で深呼吸をするだけで体の芯から癒されるようでした。
山間に広がる地形と豊かな自然
雲南市は中国山地のふもとに位置し、山と川、田畑に囲まれた地形が特徴です。特に斐伊川（ひいかわ）は市内を流れる清らかな川で、古くから人々の生活とともにありました。
道を歩いていると、遠くから田植えの作業や鳥の鳴き声が聞こえ、自然と歩くペースがゆるやかになります。福岡では味わえない、そんな「自然と一体化する時間」が、この地にはありました。
島根県雲南市出身の有名人
雲南市はあまり知られていないかもしれませんが、地元出身の著名人もいます。特に知られているのが、劇作家で演出家の井上ひさし氏。彼の作品には、地方に生きる人々の機微や日常が丁寧に描かれていますが、それはこの町で育まれた感性があってこそだと思います。
また、アーティストや文化人が多く移住し、地域とアートをつなぐ活動も行われており、文化の香りが感じられる町でもあります。
歴史と産業が町を支える土台
雲南市は、古代からの歴史を持つ土地で、「出雲神話」にも登場する伝承の舞台として知られています。特に須我神社は、「日本最初の宮」として崇められており、古代のロマンを感じさせる場所です。
また、農業が盛んで、米や野菜、和牛の生産も多く、地元でとれたものを使った料理や商品が魅力的です。林業も盛んで、地元産の木材を使った工芸品や家具なども生産されています。
文化と伝統が今も息づく地域の力
雲南市では、伝統行事や地元の文化が今も大切に守られています。例えば「石州半紙」という手漉き和紙は、長い歴史を持ち、今なお職人によって丁寧に作られています。実際に和紙作りを体験できる工房もあり、私も挑戦しましたが、簡単そうに見えてなかなか難しい。でもその分、完成した紙には愛着が湧きました。
また、地域の子どもたちが受け継ぐ「神楽」や「獅子舞」なども季節ごとに披露され、地域の絆が文化を通して感じられます。
観光名所の数々と見どころ
雲南市には、美しい自然や歴史にまつわる観光地が数多くあります。
まず訪れたのが「加茂岩倉遺跡」。ここでは銅鐸が多数出土し、展示館ではその壮大な出土品とともに古代のロマンを体感できます。
そして「木次（きすき）線」のトロッコ列車“奥出雲おろち号”にも乗車しました。山の中を抜ける線路をゆっくりと走る列車は、まるで時間旅行のようでした。特に三段式スイッチバックの風景は迫力満点で、車窓からの眺めに見とれてしまいました。
他にも「掛合の里」では地元の歴史資料や古民家を見学でき、まるで昭和時代にタイムスリップしたかのような体験ができます。
祭りとイベントで出会う地元の活気
雲南市では年間を通してさまざまなイベントが行われています。中でも「うんなん神楽まつり」は、各地区の神楽団が競演する大規模なイベントで、地元の人々だけでなく多くの観光客が訪れます。
また、夏の「雲南夢まつり」では、地元の食や音楽が集まり、夜には花火が打ち上がるなど、祭りムード満点です。出店の焼きそばや地元特産のスイーツを味わいながら、ゆったりとした時間を過ごしました。
郷土料理と地酒に舌鼓
雲南市の食は、まさに自然とともに生きる味わいです。「仁多米」は全国的にも評価が高く、炊きたてを一口食べれば、米そのものの甘みと香りに驚かされます。
また、地元で育てられた“奥出雲和牛”を使ったステーキやハンバーグも絶品でした。やわらかく、脂の旨味がじんわりと広がる味に感動しました。
そして忘れてはいけないのが地酒。雲南市には数軒の酒蔵があり、「出雲誉」や「仁多乃酒」など、米と水にこだわった日本酒が楽しめます。旅の疲れを癒す一杯として、心にしみわたりました。
旅のお土産も魅力満載
帰り道には道の駅や地元の特産品店でお土産探し。おすすめは「仁多米」のパックごはんや、和紙を使った文具、地酒のミニボトルセットなどです。
地元の菓子店で買った「出雲ぜんざいせんべい」や「酒粕まんじゅう」も、職場の仲間に大好評でした。派手さはないけれど、素朴でどこか懐かしい味が雲南らしいと感じました。
私の旅行ルートとゆるやかな旅の流れ
今回の旅では、福岡市から新幹線で岡山を経由し、出雲市駅まで向かいました。そこからローカル線で木次駅へ。列車を乗り継ぎながらの移動は、普段味わえない旅情があり、のんびりと過ごすにはぴったりでした。
現地ではレンタカーを借りて、山間部や遺跡、温泉地などを効率よく巡りました。道の駅「さくらの里きすき」で買い物と休憩をしながら、ゆったりとした旅を楽しみました。
