福岡市で警備員として働いている私は、日々の仕事のなかで常に気を張りながら、多くの人の安全を守っています。人の流れに身を置く日常は緊張の連続で、ときどき心も体も「少しだけ、休みたい」とささやきます。そんな声に耳を傾け、今回は一人旅で心を癒すために鹿児島県南九州市を訪れました。
鹿児島県の南部に位置する南九州市には、歴史の面影を残す知覧、自然の雄大さを感じる開聞岳、美しいお茶畑、そして心に沁みる人の優しさがあります。穏やかな時間が流れるこの地で、私は静かに、自分を取り戻していく旅をしました。
歴史が語りかける知覧武家屋敷のまち並み
旅の始まりは、南九州市の中心とも言える知覧の町から。江戸時代の面影をそのままに残す「知覧武家屋敷通り」を歩いた瞬間、心にふっと静けさが広がりました。石垣と生垣が整然と並び、武家屋敷の門構えや庭園が美しく保存されていて、まるで時代を越えて歩いているかのようです。
私は制服を脱ぎ、ゆったりとした服に着替えてこの町をそぞろ歩きました。人混みはなく、鳥の声と風の音だけが耳に入ってきます。とある庭園のベンチに腰かけ、しばらく空を見上げていると、まるで時間が止まったような感覚に包まれました。
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特攻平和会館で感じた静かな祈り
知覧といえば、特攻平和会館も忘れてはなりません。心を癒す旅のなかで、少し胸が締めつけられる場所ではありますが、その分、深く考えさせられ、静かに自分を見つめる時間をくれます。
若き特攻隊員たちの手紙や遺影に触れ、彼らが見たであろう景色を想像しながら館内を巡りました。何かを守るという気持ち、誰かのために尽くすという思いが、自分の仕事と重なり、涙が頬をつたいました。静かな祈りの時間が、旅の意味をより深くしてくれました。
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開聞岳の絶景に心を解き放つ
次に向かったのは、南九州市からもほど近い絶景の名所「開聞岳」です。標高924メートルの美しい円錐形の山で、「薩摩富士」とも称されます。今回は山頂までは登らず、麓の開聞温泉付近で景色を堪能しました。
澄んだ空気の中、開聞岳が夕陽に染まりながら浮かび上がる様子は、まるで絵画のような美しさでした。静かな湖面に映る山の影と、遠くに聞こえる潮騒。自然の偉大さと包容力に、胸の奥からじんわりと癒されていくのを感じました。
静寂の中でくつろぐ温泉宿での一夜
宿泊は、知覧から少し足を伸ばした場所にある隠れ家のような温泉宿「お茶の香りの宿 茶心(ちゃごころ)」へ。地元の知覧茶をテーマにした小さな宿で、館内にはほのかなお茶の香りが漂っていました。
部屋に入ると、障子越しに差し込む柔らかな光が心を優しく包みます。そしてすぐに、温泉へ。露天風呂は貸切で、竹林に囲まれた湯船にひとり、ゆっくりと体を沈めます。湯に浸かったその瞬間、ふっと肩の力が抜け、張り詰めていた心がほどけていくのがわかりました。
地元の恵みを味わう癒しの料理と焼酎
夕食は、地元食材をふんだんに使った懐石料理。特に印象に残ったのは、知覧鶏の炭火焼きと、黒豚のしゃぶしゃぶです。知覧鶏は弾力のある歯ごたえと、噛むほどに広がる旨味が絶品。黒豚は脂が甘く、まさにとろける味わいでした。
そして何より心に沁みたのが、地元の焼酎「知覧Tea酎」。知覧茶の香りをまとった焼酎は、お湯割りにするとふんわりとお茶の香りが立ち上り、驚くほどまろやかな味に変化します。一口一口に、旅の安らぎが溶け込んでいるようでした。
旅の余韻を持ち帰るお土産選び
帰路につく前に、知覧の物産館でお土産を探しました。最も気に入ったのは、手摘みの知覧茶と、地元の陶芸家が作る茶碗のセット。家に帰ってからも、この旅の香りを思い出せるようなお土産です。
また、知覧の焼酎や黒豚味噌なども購入しました。すべてに地元の人の温かさと丁寧な手仕事が感じられ、「持ち帰れる癒し」として、旅の締めくくりにぴったりでした。
福岡市から南九州市への穏やかな旅路
今回の旅は、福岡市から新幹線で鹿児島中央駅へ。そこから指宿枕崎線に乗り換えて知覧方面へ向かいました。時間にして約3〜4時間。列車に揺られる時間もまた、この旅の癒しの一部でした。
車窓から見える海と山と茶畑、そして少しずつ日常が遠のいていく感覚。旅の始まりから終わりまで、心がゆっくりほどけていく道のりでした。
南九州市で見つけた「静けさ」という贅沢
この旅で私が得たものは、言葉にしづらいけれど確かに存在する「静けさ」と「やすらぎ」でした。観光地としての賑やかさではなく、人と自然、歴史と時間がそっと寄り添う南九州市の空気に、私は心から癒されました。
忙しない日々の中で、こんなふうに立ち止まって、自分を大切にできる時間を持つことの大切さを、改めて感じました。また明日から頑張るために、時々こうして「ひとりで静かに旅する」ことが、私にとっての最高のご褒美なのかもしれません。
南九州市、またきっと帰ってきます。優しさと静けさを、ありがとう。